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経営・資金繰り

インボイス2割特例の終了と中小事業者の資金繰り|簡易課税への切替・納税資金確保の実践ガイド

執筆者 ファクット編集部

そもそもインボイス制度・2割特例とは何かをやさしく解説したうえで、2割特例がいつ終わるのか、終了後に消費税の負担がどう変わるのか、簡易課税への切替判断と届出期限、納税資金の確保方法までを実務目線で整理します。

この記事の執筆者

ファクット編集部

ファクタリング業界に精通した編集チームが、資金調達に関する正確で実践的な情報をお届けします。金融機関での実務経験者、中小企業の財務コンサルタント経験者を中心に構成されています。

アドバイザリー監修

弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・行政書士など各種国家資格の保有者が在籍するSOASがアドバイザリーとして編集体制を監修しています。

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監修者 ろい氏

監修ろいFP・宅地建物取引士・行政書士/ファクタリング比較ラボ主宰

ファクタリングを30社以上利用し、著書『ファクタリングのトリセツ』も出版した実務家が内容を確認しています。

インボイス2割特例終了と資金繰り
インボイス2割特例終了と資金繰り

まず「インボイス制度」と「2割特例」をやさしく整理する

「2割特例が終わる」というニュースを見ても、そもそもインボイス制度や2割特例が何なのかが曖昧だと、自分にどう影響するのか判断できない。まずはこの2つを、それぞれ短く確認しておこう。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、登録した事業者が発行する「適格請求書(インボイス)」がないと、取引先が支払った消費税を自社の納税額から差し引けなくなる仕組みのこと。2023年10月に始まった。

これにより、これまで消費税を納めなくてよかった小規模事業者(免税事業者=前々年の課税売上1,000万円以下などで納税を免除されていた人)も、「取引先がインボイスを欲しがるから」という理由で、自ら登録して課税事業者(消費税を納める事業者)になるケースが一気に増えた。

2割特例とは

そこで負担を和らげるために用意されたのが2割特例だ。インボイス登録を機に免税から課税事業者になった人に限り、売上にかかった消費税の2割だけを納めればよいという、期間限定の軽減措置である。

たとえば年間売上1,000万円なら、本来は60〜100万円規模の消費税が、2割特例ならおおよそ20万円前後まで圧縮される。届出も不要で、確定申告書に「2割特例を使う」と書くだけ。インボイス登録に踏み切れない人の背中を押すための、かなり手厚い特例だった。

この特例がもうすぐ終わる。終わったあと何もしないと、消費税の納税額が数倍に跳ね上がる可能性が高い。以下では、いつ終わるのか → 終了後どうなるのか → 資金繰りへの影響 → 具体的な対策の順に整理していく。

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いつ終わる?──個人と法人で「最終年」が違う

2割特例が使えるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日が属する各課税期間だ。ここでつまずきやすいのが、「課税期間(=消費税を計算する1年の区切り)」の取り方が個人と法人で違う点である。

個人事業主:2026年(令和8年)分が最後

個人事業主の課税期間は暦年(1月1日〜12月31日)で固定だ。

年分2割特例の適用確定申告期限
2024年2025年3月
2025年2026年3月
2026年◯(最終年)2027年3月
2027年〜
「個人だから2026年9月で切れるのでは」と誤解されがちだが、令和8年9月30日を含む課税期間=2026年1月〜12月がそのまま最終年になる。2026年12月までの取引が対象だ。

法人:決算月で最終課税期間が変わる

法人の課税期間は事業年度なので、決算月によって「令和8年9月30日を含む課税期間」が変わる。

決算月2割特例の最終課税期間
3月決算2026年4月〜2027年3月期
9月決算2025年10月〜2026年9月期
12月決算2026年1月〜2026年12月期
9月決算の法人はもう最終期に入っている。3月決算なら2027年3月までは2割特例で乗り切れる。まず自社の決算月から、出口までの残り月数を確認しておきたい。
関連記事:インボイス制度とファクタリング|免税事業者が知るべき資金繰り対策

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終了後どうなる?──「簡易課税」か「本則課税」を選ぶ

2割特例が終わると、消費税の計算は次の2つから選ぶことになる。どちらを選ぶかで納税額が数十万円変わることもあるため、必ず試算してから決める項目だ。

計算方式どう計算するか主な条件事前届出
簡易課税売上の消費税に「みなし仕入率」を掛けて控除額を出す課税売上高が5,000万円以下必要
本則課税(原則課税)実際の仕入・経費にかかった消費税を集計して控除条件なし不要

簡易課税のみなし仕入率(業種で決まる)

簡易課税とは、実際の仕入額を細かく集計せず、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を売上の消費税に掛け、それを控除とみなす方式。事業区分だけで控除額が決まるシンプルさが特徴だ。

事業区分業種の例みなし仕入率
第1種卸売業90%
第2種小売業、農林漁業(飲食料品)80%
第3種製造業、建設業70%
第4種飲食店業、ほか60%
第5種運輸通信業、サービス業(飲食店除く)50%
第6種不動産業40%
たとえば第5種のITフリーランス(みなし仕入率50%)で年間売上800万円(税込880万円)なら、簡易課税での納税額はおおよそ40万円。2割特例(約16万円)からは増えるが、本則課税より事務負担は軽い。

本則課税が有利になりやすいケース

本則課税は、実際にかかった仕入・経費の消費税を集計して差し引く正攻法。次のような事業者は、簡易課税より納税額が小さくなることがある。

  • 設備投資・大規模仕入が多い製造業・建設業
  • 外注費比率が高いWeb制作・建設サブコンなど
  • 課税仕入の比率がみなし仕入率より明確に高い事業
ただし本則課税は、控除を受けるのに仕入先からのインボイス保存が前提になり、経理の手間は重くなる。税負担そのものを最小化したいなら、決算データで試算して判断するのが確実だ。
納税シミュレーション
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簡易課税を選ぶなら「届出期限」を最優先で押さえる

簡易課税の最大の落とし穴は、事前届出制である点だ。「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに税務署へ出す必要がある。確定申告の時期になってから「やっぱり簡易課税で」は通用しない。

個人事業主のスケジュール

適用したい年届出期限
2027年分から簡易課税2026年12月31日
2028年分から簡易課税2027年12月31日
2割特例が終わる翌年(2027年)から簡易課税を使いたい個人事業主は、2026年内に届出を出さなければならない

法人のスケジュール(例:3月決算)

適用したい事業年度届出期限
2027年4月〜2028年3月期から2027年3月31日
3月決算法人は、2割特例の最終期(2026年4月〜2027年3月)の終了直前である2027年3月末が、次期から簡易課税を使うためのリミットになる。

一度選ぶと「2年継続」のルール

簡易課税を選ぶと、最低2年間は変更できない。途中で大きな設備投資の予定があるなら、本則課税のままのほうが控除を取れる場合もある。複数年の計画を踏まえて判断したい。

関連記事:消費税の納税と資金繰り|中間申告・予定納税・滞納回避の実務ガイド

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資金繰りへの影響──どれだけ負担が増えるか

「いくら増えるのか」をイメージできると、備える金額も見えてくる。業種・売上規模ごとに、簡易課税ベースで年間の増加額を試算してみる。

ケース1:年間売上800万円のITフリーランス(第5種)

計算方式年間納税額(概算)
〜2026年分2割特例約16万円
2027年分〜簡易課税(第5種)約40万円
増加額+24万円/年
月あたり約2万円の納税原資を毎月積み立てておく必要が出てくる。

ケース2:年間売上1,200万円の小売業(第2種)

第2種のみなし仕入率は80%で、2割特例の控除率(80%相当)と一致するため、納税額はほぼ変わらない。卸売業(第1種・90%)ならむしろ簡易課税のほうが有利になる。

ケース3:年間売上1,500万円の飲食店(第4種)

計算方式年間納税額(概算)
〜最終課税期間2割特例約30万円
翌期〜簡易課税(第4種)約60万円
増加額+30万円/年
飲食店も月あたり約2.5万円の上積みが必要だ。賃料・人件費の上昇と重なれば、想像以上に資金繰りを圧迫する。
キャッシュフローへの影響
キャッシュフローへの影響

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対策──納税資金を「ショートさせない」3つの仕組み

特例終了後の負担増は、ほぼ全ての対象事業者に降りかかる。借入で消費税を払うのは危険なので、まずキャッシュ管理の仕組み化を優先したい。

仕組み1:納税専用口座へ自動積立

毎月の入金から「売上の3〜5%」を、納税専用の別口座へ自動振替する。年間納税額の試算を12で割った額を毎月積み立てる方法でもよい。生活費・運転資金と物理的に分けることが、資金ショートを防ぐ最大のポイントだ。消費税と資金繰りの基本は消費税と資金繰り|納税資金の管理と確保の基本も参考になる。

仕組み2:中間申告(予定納税)で平準化する

前年の年税額が48万円を超えると、消費税の中間申告(予定納税)が始まる。年1回の納税が2回・4回・12回へ分割される仕組みだ。一見負担が増えたようでも、「年1回でドカンと払う」より「分割で平準化」したほうが資金繰りはむしろ楽になる。年税額48万円以下でも、自分から中間申告を選んで分割化できる。

仕組み3:ファクタリングを「納税月のつなぎ」に限定して使う

売掛金がある事業者なら、納税月の1〜2ヶ月前にファクタリング(売掛金を売って入金を前倒しする資金調達)で納税資金を確保する手がある。借入ではないので負債は増えない。

ただし手数料コストがかかるため、常用は避ける。「初年度の納税資金が間に合わなかった」など移行期の一時しのぎと位置づけ、翌期からは積立とサイト短縮交渉で構造的に解決していくのが王道だ。手数料の差は会社で大きく変わるため、使うならランキングで条件を絞り、無料一括見積もりで受取総額を比べて選びたい。確定申告との絡みは確定申告と資金繰りの実務ガイドも参照。

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実務ステップ──残り期間でやること

時期実務アクション
特例終了の半年〜1年前直近2年の決算で「簡易 vs 本則」の納税額を試算(税理士相談)
その後事業区分の確定、必要に応じてインボイス保存の事務フロー整備
個人=2026年12月/法人=決算月簡易課税選択届出書を税務署へ提出
翌年1月〜納税専用口座の運用開始、月次積立スタート
翌年中中間申告への対応、初年度の納税月にファクタリング枠を準備
複数の事業を兼業している場合は、売上を事業区分ごとに分けて記帳する必要がある(例:物販+コンサル=第2種と第5種の混在)。会計ソフトの設定も含め、早めに記帳ルールを整えることが大事だ。

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2割特例終了チェックリスト

確認項目対応状況
自社の課税期間と2割特例の最終適用期を確認したか
簡易課税と本則課税の納税額を試算したか
簡易課税を選ぶ場合の事業区分を確定したか
「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出期限をカレンダーに入れたか
翌期以降の納税額を月割で試算し、積立計画を作ったか
納税専用口座を分離したか
中間申告(予定納税)の対象になるか確認したか
移行期のつなぎ資金として、ファクタリングの選択肢を把握したか
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まとめ

  • インボイス制度は、適格請求書がないと取引先が消費税を差し引けなくなる仕組み。これを機に免税事業者が課税事業者に転じた
  • 2割特例は、その人たちが「売上の消費税の2割だけ納めればよい」とする期間限定の軽減措置
  • 終了時期は令和8年9月30日を含む課税期間。個人は2026年分、法人は決算月で異なる
  • 終了後は簡易課税か本則課税を選ぶ。多くの小規模事業者は簡易課税が有力だが、業種・仕入構造で試算が必要
  • 簡易課税は事前届出制。個人が2027年分から使うなら2026年12月31日が期限
  • 負担は年間20〜30万円程度増えるケースが多い。月次の積立で備え、ファクタリングは移行期のつなぎに限定する
「気づいたら届出期限を過ぎ、本則課税で重い納税が確定した」──これが最悪のシナリオだ。残り期間を計画的に使い、消費税の負担増を織り込んだ経営に切り替えていきたい。

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この状況でファクタリングを使うべきケース/使わない方がいいケース

ファクタリングは「売掛金を期日前に現金化する」手段です。資金繰りの 課題すべてに最適なわけではないため、向くケース・向かないケースを 整理しておきましょう。

使うべきケース

  • 売掛金はあるが入金待ちで、一時的に資金が不足している
  • 銀行融資が間に合わない/審査に時間をかけられない
  • 担保・保証人を用意できない、決算内容に不安がある
  • 短期・単発の資金需要で、回収後に解消する見込みがある

使わない方がいいケース

  • 慢性的な赤字・恒常的な資金不足(手数料負担で資金繰りが さらに悪化し、多重債務に陥るおそれ)
  • 低金利の融資・公的支援が間に合う、または併用すべき状況
  • そもそも売掛金がない、将来債権頼みでの利用
  • 手数料の水準やレンジを開示しない事業者しか選択肢がない

※ 金融庁も、高額な手数料のファクタリングは資金繰りの悪化・多重債務に つながるおそれがあると注意喚起しています。手数料は売掛先の信用力・ 金額・期日・契約形態等で変動します。利用前に複数社の条件を比較し、 本当に必要かを見極めてください。

次のステップ

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ファクット編集部(監修: ろい

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