ファクタリング手数料を動かすのは「金利」より「倒産」──倒産が年7%増え続ければ2社間は10.8%→約11.1%へ
ファクタリング手数料を左右するのは、実は金利よりも「倒産(焦げ付き)」です。金利が1%上がっても手数料はほぼ動きませんが、倒産が増えると手数料はしっかり上がります。倒産が今のペース(年+7%)で増え続ければ2社間手数料は10.8%→約11.1%、加速すれば約11.4%へ。公開手数料指数・学術研究・最新の倒産データをもとに、手数料のしくみと「これからどうなるか」をやさしい言葉で解説します。
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まず結論:手数料を動かすのは「金利」より「倒産」
最近「金利が上がるから、ファクタリング手数料も上がるのでは?」とよく聞かれます。でも、データを計算してみると答えは少し意外でした。
- 金利が1%上がっても、手数料はほとんど動きません(2社間で 10.8% → 約10.9%)。ファクタリングは1〜2か月の短期取引なので、金利の直接の影響は小さいのです。
- 本当に効くのは「倒産(焦げ付き)」のほう。売掛先が倒産して焦げ付くリスクが増えると、手数料は 10.8% → 約11.3〜11.5% へとしっかり上がります。
- そして倒産は、いま増え続けています。帝国データバンクによると2025年度は10,425件で4年連続増、2026年も加速中(1〜4月で前年比+7.2%)。
- このペース(年+7%)が続けば、2社間手数料は 10.8% → 約11.1%、さらに加速すれば約11.4% へ。これからは「金利」より「倒産」が手数料を押し上げる、というのが本稿の結論です。
手数料は「4つの部品」でできている
アメリカの中央銀行(ミネアポリス連邦準備銀行)は、お金を貸すときの値段を「値段=資金を用意するコスト+手間賃+焦げ付きへの備え+もうけ」と説明しています(コストプラス方式)。ファクタリングの手数料も、まったく同じ構造です。
| 部品 | 何のお金? | たとえ |
|---|---|---|
| ① 資金コスト | 会社が買取代金を用意するための利息 | 友だちに貸すために自分も借りてくる分 |
| ② 手間賃 | 書類確認・審査・事務の人件費 | 本当に返ってくるか調べる手間 |
| ③ 焦げ付きへの備え | 戻ってこなかったときのための積み立て | 10人に1人逃げるなら、その分を全員に少し上乗せ |
| ④ もうけ | 会社の利益 | お店の利益と同じ |
なぜ2社間は3社間より高いのか
3社間は「あなた」「ファクタリング会社」「売掛先」の3者で契約し、売掛先の承諾を得ます。会社は売掛先に直接確認・回収できるので低リスク → 手数料が安い。
2社間は「あなた」「ファクタリング会社」の2者だけで、売掛先には知らせません。会社は売掛先に確認できないため、使い込み・二重譲渡・架空請求といったリスクを抱えます → 手数料が高い。
実際の数字でも、はっきり差が出ます。
| やり方 | 相場 | ファクット公開手数料指数(2026年5月) |
|---|---|---|
| 2社間 | 8〜18% | 約 10.8% |
| 3社間 | 2〜9% | 約 5.3% |
「焦げ付きへの備え」を計算してみる
金融の世界には、損失を見積もる世界共通の公式があります。国際ルールを決めるBIS(国際決済銀行)の定義です。
予想される損失(EL)= 焦げ付く確率(PD)× 戻らない割合(LGD)
まず誤解しやすい点を先に。これから出す「焦げ付き率」は、会社のもうけ(利益)や販管費(営業・審査・事務の手間賃)を差し引いた“あと”の数字です。手数料まるごとを焦げ付きとみなすわけではありません。手数料指数から①資金コスト・②販管費・④もうけを引いた残りが「リスク上乗せ分」で、それを「戻らない割合(LGD)」で割り戻すと、会社が内心で見込む焦げ付き確率の目安になります。
たとえば2社間・ふつうシナリオでは、引く中身(合計4.5%)は資金コスト0.5%+販管費2.0%+もうけ・バッファ2.0%。これを引いた残り6.3%を LGD80% で割って、6.3÷0.8=約7.9%となります(=もうけも販管費も引いたあとの数字)。
ファクット公開手数料指数で、3つのシナリオ(きびしめ/ふつう/ゆるめ)を計算した結果がこちらです(「コスト+もうけの想定」が引いた①②④の合計)。
2社間(指数 10.8%)
| シナリオ | コスト+もうけの想定(①②④合計) | 戻らない割合(LGD) | リスク上乗せ分 | 逆算した焦げ付き率 |
|---|---|---|---|---|
| きびしめ | 6.0% | 100% | 4.8% | 約 4.8% |
| ふつう | 4.5% | 80% | 6.3% | 約 7.9% |
| ゆるめ | 3.0% | 60% | 7.8% | 約 13.0% |
| シナリオ | コスト+もうけの想定(①②④合計) | 戻らない割合(LGD) | リスク上乗せ分 | 逆算した焦げ付き率 |
|---|---|---|---|---|
| きびしめ | 3.5% | 80% | 1.8% | 約 2.3% |
| ふつう | 2.5% | 70% | 2.8% | 約 4.0% |
| ゆるめ | 1.5% | 50% | 3.8% | 約 7.6% |
これは1回の取引(おおむね1〜2か月)あたりの見込みで、もうけ・販管費を引いたうえで手数料から逆算した参考推計です。各社が公表する実際の貸倒率ではありません。
実際の焦げ付きは「3〜4%」
では、実際の焦げ付き(ロス)はどれくらいなのでしょうか。ファクタリングの実務関係者へのヒアリングによると、実際の焦げ付きによるロスは、おおむね 3〜4% 程度だといいます(買い取った売掛金100のうち、3〜4が最終的に損になる)。これはヨーロッパの業界団体(EUF/FCI)の「ファクタリングは焦げ付きが少ない」という指摘とも方向が一致します。
ただし、この3〜4%は「法人向け」と「個人事業主向け」をならした平均です。個人事業主向けは信用情報や決算資料が法人より少なく、売掛先の確認もしにくいため焦げ付きロスは平均より高め、法人向けは資料がそろい確認もしやすいため平均より低めになります。個人事業主の手数料が高くなりやすいのは、この焦げ付きリスクの差も理由のひとつです。
ここで大事な発見があります。逆算した焦げ付き率(2社間7.9%)が、実際のロス(3〜4%)より高いことです。これは「もうけ・販管費を4.5%引く」という前提が控えめで、本当はもう少し多くの利益・販管費が手数料に入っているため。その分が焦げ付きでもないのに「リスク上乗せ分」に紛れ込み、焦げ付き率を高く見せています。つまり手数料の上乗せ分の多くは、焦げ付きそのものより、もうけ・販管費・「予想以上の大損」に備える資本コスト・競争のなかでの調整で説明できます。「手数料が高い=それだけ焦げ付いている」わけではない——これがこの比較のいちばん大事な結論です。
世界の研究は何と言っているか
- Klapper (2006, World Bank/JBF):ファクタリングの本質は「借り手ではなく、売掛先(払う会社)のリスクで審査する」こと。だから会社が小さくても、売掛先が立派なら手数料は安くなりうる。
- Sopranzetti (1998):売った後の回収努力は会社から見えない(モラルハザード)。だからリスクをすべて引き受けるやり方は、いちばん質のいい売掛金にしか使われない。日本の2社間(確認できない)も同じ構図。
- Mian & Smith (1992) / Soufani (2002):会社の規模・信用力・業種によって、ファクタリングの使われ方は変わる。
- EU Federation for Factoring (EUF) / FCI:ファクタリングは焦げ付いたときの損が小さい(低LGD)しくみで、損失は銀行融資の3〜4分の1。ただし2社間はこの安全性が下がる分、手数料が高い。
これから手数料は上がるのか──金利の話
リスクフリーレートとは、ひとことで言えば「いちばん安全な置き場所にお金を置いたときの利息の基準」(日本では国債の利回りなど)。世の中のあらゆる金利・手数料は、この基準の上に積み上がります。
日本の金利は、この2年で大きく動きました。
| 時期 | 政策金利 | できごと |
|---|---|---|
| 2024年3月 | −0.1% → 0〜0.1% | マイナス金利をやめた(17年ぶり利上げ) |
| 2024年7月 | 約 0.25% | 追加利上げ |
| 2025年1月 | 約 0.5% | 17年ぶりの高さ |
| 2025年12月 | 約 0.75% | 約30年ぶりの高さ |
「金利が●%上がったら」「倒産が●%増えたら」手数料はどうなる
「上がる」と言っても、どれくらいかが分からないと実感がわきません。そこで、2つの問いに具体的な数字で答えます(今の2社間手数料は 10.8%)。
「ポイント(pp)」 =%の数字そのものが動く幅。手数料が 10.8%→10.9% なら「+0.1ポイント」です。
Q1. 金利が1%上がったら?
→ ほとんど変わりません(10.8% → 約10.9%)。 ファクタリングは1〜2か月の短期取引なので、年1%の金利上昇でも効くのは期間の分だけ(1か月なら約+0.08ポイント、3か月でも約+0.25ポイント)。金利が2%上がっても、せいぜい+0.1〜0.2ポイント程度です。
Q2. 倒産が増えて、売掛先の焦げ付きが1ポイント増えたら?
→ しっかり上がります(10.8% → 約11.3〜11.5%)。 手数料には焦げ付きへの備えが入っているので、焦げ付きが増えるとそのまま上乗せされます(戻らない割合70%なら+0.7ポイント、3社間は50%なので+0.5ポイント)。公式は「予想損失 = 焦げ付く確率(PD) × 戻らない割合(LGD)」です。
Q3. 倒産が「今のペース」で増え続けたら?
→ 2026年は前年比+7%前後で増加中。このペースが続くと 2社間 10.8% → 約11.1%(+0.3ポイント)。さらに加速して+10%なら約11.2%、+15%なら約11.4%です。
| もし●が上がったら | 2社間手数料(今 10.8%)はこう動く | 効き方 |
|---|---|---|
| 金利が 1% 上がる | 10.8% → 約10.9% | ほとんど変わらない |
| 焦げ付きが 1ポイント 増える | 10.8% → 約11.3〜11.5% | しっかり上がる |
| 倒産が 年+7% で増え続ける | 10.8% → 約11.1% | じわじわ上がる |
倒産は増え続けています。下のグラフのとおり、2026年に入って前年比の伸びが拡大=倒産のスピードが上がっています。
これからどれくらい上がりうるか(シミュレーション)
最新の倒産動向(2026年1〜4月+7.2%で加速、帝国データバンクは2026年度も増加を予測)をふまえ、今後1〜2年の手数料上昇圧力を試算しました(2社間・標準、実ロス基準3.5%、金利の直接分を含む)。
| 今後の倒産トレンド | 焦げ付きロス | 2社間手数料への上昇圧力 |
|---|---|---|
| 横ばい | 3.5% | ほぼ +0.0〜0.1pp |
| 現状ペース継続(年+7%) | 3.75% | 約 +0.3pp(10.8%→約11.1%) |
| やや加速(+10%) | 3.85% | 約 +0.4pp |
| 加速(+15%) | 4.03% | 約 +0.6pp(→約11.4%) |
3社間はこの約半分、個人事業主・小規模向けは倒産がこの層に集中しているためさらに上振れしやすいと考えられます。
1年後・2年後・3年後の手数料はどうなる?
倒産の増加と利上げを同時に織り込むと、手数料は今後どう動くか。前提を置いて試算しました。
前提(メインシナリオ)
- 倒産:前年比 +7%→+5%→+4%(増加は続くが徐々に鈍化)→ 焦げ付きロスは 3.5%→3.75%→3.93%→4.09%
- 政策金利:0.75%(現在)→1.0%→1.25%→1.5%(年+0.25%の利上げ)
| 時点 | 倒産(焦げ付きロス) | 政策金利 | 2社間手数料 | 3社間手数料 |
|---|---|---|---|---|
| 現在(2026) | 3.5% | 0.75% | 10.8% | 5.3% |
| 1年後(2027) | 3.75% | 約1.0% | 約11.1% | 約5.4% |
| 2年後(2028) | 3.93% | 約1.25% | 約11.3% | 約5.5% |
| 3年後(2029) | 4.09% | 約1.5% | 約11.5% | 約5.7% |
倒産がもっと増え、利上げも速い「加速シナリオ」(倒産+12%前後/金利+0.5%ペース)なら、2社間は3年で 約12.4% まで上がる計算になります。
読みどころ
- どちらのシナリオでも、効いているのは主に倒産(焦げ付き)の増加。金利は直接にはわずかしか効きません。
- 上がり方は「急騰」ではなくじわじわ。会社間の競争が上昇を抑えるためです。
- 個人事業主・小規模向けは上振れしやすい(倒産がこの層に集中しているため)。
⚠️ これは前提を置いたイメージ試算で、将来の手数料を予測・保証するものではありません。倒産・金利の実際の動きで変わります。
3つとも「上がる」方向で、とくに焦げ付き(倒産)の影響が大きく、2社間ほど効きます。ただし会社どうしの競争もあるので、急騰というより当面は0.数ポイントの緩やかな上昇圧力がかかる地合いになった、というのが正確な見方です(上記は他の条件を一定としたイメージ計算で、将来を保証するものではありません)。
手数料を下げるためにできること
手数料が高くなる理由がわかれば、下げる準備もできます。
- 通帳の入金履歴や、売掛先との取引実績がわかる資料を用意する
- 請求書だけでなく、契約書・発注書も出す
- 複数の会社から見積もりをとって比べる(もっとも効果的)
- 急ぎすぎない/3社間も検討する/必要な金額を最低限にしぼる
注意: 「手数料が著しく高い」「買取代金が売掛金の額に比べて極端に低い」ものは、ファクタリングを装った違法な貸付け(ヤミ金)の可能性があります。金融庁も注意を呼びかけています(ファクタリングの利用に関する注意喚起)。少しでもおかしいと感じたら契約せず、公的な相談窓口に相談してください。
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主な出典: Klapper (2006) *Journal of Banking & Finance*/Sopranzetti (1998)・Soufani (2002) *Journal of Economics and Business*/Mian & Smith (1992) *The Journal of Finance*/BIS「Basel II IRB Explanatory Note」(2005)/Federal Reserve Bank of Minneapolis (2000)/EU Federation for Factoring・FCI/日本銀行 各政策決定発表(政策金利2025年12月 約0.75%)/金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」/帝国データバンク 倒産集計(2025年度報 10,425件・前年度比+3.5%・4年連続増、2026年4月報 +8.8%・物価高倒産108件で過去最多、2026年1月報 金利上昇影響)・東京商工リサーチ 倒産集計/矢野経済研究所(2025)。
監修:ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社
本記事はファクット編集部が公開情報と学術研究をもとに作成した参考分析であり、個別の審査結果・手数料を保証するものではありません。

