ファクタリングと電子記録債権(でんさい)は「2つの問い」だけで決まる|取引先対応と自社の銀行審査
ファクタリングとでんさい割引の比較は7項目並べる必要はない。『取引先がでんさいネットに登録しているか』『自社の銀行審査が通る財務状況か』の2問でほぼ判断は終わる。Yes-Yes ならでんさい割引(年利1〜5%)、それ以外はファクタリング(指数で2社間11.1% / 3社間5.3%)。掲載248社の実勢データを使って判断ルートを明確化する。
この記事の執筆者
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アドバイザリー監修
弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・行政書士など各種国家資格の保有者が在籍するSOASがアドバイザリーとして編集体制を監修しています。
監修ろいFP・宅地建物取引士・行政書士/ファクタリング比較ラボ主宰
ファクタリングを30社以上利用し、著書『ファクタリングのトリセツ』も出版した実務家が内容を確認しています。
「7項目比較」を読むより「2つの問い」に答えるほうが速い
ファクタリングとでんさい割引の比較記事は、たいてい7〜10項目の比較表で始まる。法的性質・手数料・審査・スピード・償還請求権——項目を覚えても、自分のケースに当てはめる作業は変わらない。
実務的に判断を分けるのは、次の2つの問いだけだ。
問い1:今回の売掛先はでんさいネットに登録しているか?
問い2:自社は銀行融資の審査を通る財務状況か?
両方 Yes なら でんさい割引(年利1〜5%)。それ以外なら ファクタリング。本記事はこの2問の答えに辿り着くために必要な情報だけを置く。
まず数字を置く——掲載248社のファクタリング実勢(2026-05-16 時点)
「ファクタリングは2社間で5〜18%」のような幅では、でんさい割引の年利1〜5%と並べた瞬間に意思決定が歪む。掲載248社の実勢を置く。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 2社間ファクタリング 指数 | 約 11.1% |
| 3社間ファクタリング 指数 | 約 5.3% |
| 公表手数料 下限の中央値 | 3% |
| 公表手数料 上限の中央値 | 15% |
| 最短即日〜翌日入金に対応 | 約8割が対応 |
| 個人事業主に対応 | ほぼ全社が対応 |
| オンライン完結に対応 | 222 / 248社 |
出典:ファクット掲載248社の公開条件をもとに集計(2026-05-16 時点・β版)。最新値は手数料指数を参照。
でんさい割引の年利1〜5%とファクタリング3社間指数 5.3% は近い水準にある。「でんさいが圧倒的に安い」のは2社間と比較した時の話で、3社間が許される取引なら差は限定的だ。
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問い1:取引先はでんさいネットに登録しているか
でんさい割引を使うには、債務者(取引先)と債権者(自社)の双方がでんさいネットに登録している必要がある。これは「自社が登録すれば良い」話ではなく、相手の意思に依存する点に注意。
普及率の現実
2026年時点ででんさいネット利用者数は約 50万社。日本の法人数(約180万社)の 3割弱にとどまる。傾向は明らかで、大手企業ほど対応、中小企業同士の取引は未対応が多い。
| 取引先タイプ | でんさい対応率の傾向 |
|---|---|
| 上場企業・大手子会社 | 高い(多くは対応済) |
| 中堅企業(業歴長い) | 約半数程度 |
| 中小企業・地域企業 | 低い |
| 個人取引・小規模事業者 | ほぼ未対応 |
確認方法
確認する一番手っ取り早い手段は、取引先の経理担当に「でんさい使えますか」と直接聞くこと。事前に銀行(自社の取引銀行)に確認するのは順序が逆で、相手の状況が分からないと話が進まない。
問い1の判定
- Yes(取引先がでんさい対応済) → 問い2へ
- No(取引先が未対応/不明) → ファクタリングへ(でんさい割引は構造的に使えない)
問い2:自社は銀行融資の審査を通る財務状況か
でんさい割引は「電子記録債権の割引」という名前だが、実態は銀行融資だ。よってでんさい割引には銀行の融資審査がある。
審査で問われる主な項目
- 直近期の決算内容(黒字/赤字、債務超過の有無)
- 業歴(創業からの年数)
- 既存借入・返済状況
- 税金・社会保険料の滞納の有無
- 主要取引先の信用力
問い2の判定
- Yes(銀行融資が通る財務状況) → でんさい割引が使える(年利1〜5%、コスト面で有利)
- No(赤字・債務超過・滞納・創業間もない等) → ファクタリングへ(売掛先の信用力で審査するため、自社の財務が痛んでいても通る)

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2問の組み合わせで判定する早見表
問い1・2 の組み合わせで、選ぶべき手段は機械的に決まる。
| 問い1(取引先でんさい対応) | 問い2(自社の銀行審査通過) | 第一選択 |
|---|---|---|
| Yes | Yes | でんさい割引(年利1〜5%) |
| Yes | No | ファクタリング(売掛先信用力ベース) |
| No | Yes | ファクタリング(でんさい使えない) |
| No | No | ファクタリング(一択) |
掲載248社の3社間指数 5.3% と、でんさい割引の年利上限 5% はほぼ並ぶ水準。3社間が使えるなら、でんさい割引と並べてもコスト差はそれほど大きくない。
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「両方 Yes」の場合の追加判断——リスクを誰が持つか
問い1・2 ともに Yes、つまりでんさい割引が使える場合でも、もう1つだけ確認したい論点がある。
でんさい割引には償還請求権がある
でんさい割引で債務者(取引先)が支払期日に支払えなかった場合、利用者に遡及請求が来る。つまり「取引先が倒産したら自社が肩代わり」する構造だ。
これは手形割引と同じ仕組みで、低コストの代償としてリスクを利用者が引き受けている。
ファクタリング(ノンリコース)は逆
正規のファクタリングは償還請求権なしで、売掛先が倒産しても利用者の負担はない。リスクはファクタリング会社が引き受ける。
取引先の経営状態に不安があるなら
「両方 Yes」だが、売掛先の経営に不安(業績悪化、業界全体の縮小、最近の取引先倒産など)がある場合、ファクタリング(ノンリコース)でリスクごと売るほうが合理的な場面もある。
| 状況 | 選択 |
|---|---|
| 売掛先が安定(上場・官公庁・業歴長い大手) | でんさい割引(低コスト) |
| 売掛先の経営に不安あり | ファクタリング(リスク移転) |
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手取り額のシミュレーション——300万円・60日の場合
具体的な数字で確認する。売掛金300万円、支払期日まで60日。
| 手段 | コスト計算 | 手取り |
|---|---|---|
| でんさい割引(年利3%) | 300万 × 3% × 60/365日 = 約14,795円 | 約2,985,205円 |
| ファクタリング 3社間(5.3%) | 300万 × 5.3% = 159,000円 | 約2,841,000円 |
| ファクタリング 2社間(11.1%) | 300万 × 11.1% = 333,000円 | 約2,667,000円 |
「30万円のコスト差は『売掛先が確実に払う』という前提を買う価格」と考えると、リスク評価次第で答えは変わる。
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併用が最適解になるケース——取引先ごとに分ける
「ファクタリング or でんさい」を二者択一で考える必要はない。取引先ごとに最適な手段を選ぶのが実務的だ。
併用パターンの例
| 取引先 | 状況 | 選ぶ手段 |
|---|---|---|
| 上場大手A社 | でんさい対応・信用力高 | でんさい割引(年利2.5%) |
| 中堅B社 | でんさい未対応・業績やや不安 | ファクタリング 2社間(ノンリコース、リスク移転) |
| 大手C社(3社間OK) | でんさい対応・関係性良好 | でんさい割引 or ファクタリング3社間(両方可) |
| 新規D社 | でんさい未対応・信用情報乏しい | ファクタリング 2社間(売掛先信用力で審査) |
「すべての売掛金を1つの手段で処理する」必要はなく、手段は資金繰りのツール群として持っておくのが合理的だ。
---最後に——2問を書き留めて取引先を分類する
ファクタリングとでんさい割引の比較は、7項目の表より、次の2問の答えのほうが実用的だ。取引先ごとに整理しておけば、資金需要が発生した時にすぐ動ける。
- [ ] 問い1:取引先はでんさいネットに登録しているか?(経理担当に確認)
- [ ] 問い2:自社は銀行融資の審査を通る財務状況か?(直近期決算で判定)
- [ ] 追加:その売掛先の経営状態に不安はあるか?(あればファクタリングのリスク移転を優先)
7項目を覚えるより、2問の答えを取引先ごとに持っておく方が、確実に運用が早くなる。




