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経営・資金繰り

源泉所得税の納期の特例で資金繰りが苦しくなる理由と対策|半年分まとめ払いの乗り切り方

執筆者 ファクット編集部

従業員10人未満の事業者が使える「源泉所得税の納期の特例」。毎月の納付が年2回(7月・1月)にまとまるため一見ラクですが、半年分を一括で払う7月10日・1月20日に資金繰りが一気に苦しくなります。納付額の試算方法、積み立てのコツ、納付資金が足りないときのファクタリング活用までを実務目線で解説します。

この記事の執筆者

ファクット編集部

ファクタリング業界に精通した編集チームが、資金調達に関する正確で実践的な情報をお届けします。金融機関での実務経験者、中小企業の財務コンサルタント経験者を中心に構成されています。

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監修者 ろい氏

監修ろいFP / 宅地建物取引士 / 行政書士

ファクタリングを30社以上利用し、著書『ファクタリングのトリセツ』も出版した実務家が内容を確認しています。

納税に関する書類のイメージ
納税に関する書類のイメージ

「毎月の納付がラクになる」はずが、なぜか資金繰りが苦しくなる

従業員を雇い始めた事業者の多くが、税理士のすすめで申請するのが「源泉所得税の納期の特例」だ。毎月10日にあった源泉所得税の納付が、年2回(7月10日・翌1月20日)にまとまるため、事務負担が大きく減る。

ところが、この制度を使い始めた事業者から、こんな声がよく聞かれる。

「毎月の手間は減ったのに、7月と1月だけ、なぜか資金が一気に足りなくなる」

これは制度の落とし穴ではなく、仕組み上、当然起こることだ。毎月払っていた金額が消えたわけではなく、半年分がまとめて一度に出ていくだけ。手元に納付資金を残しておかなければ、納付月に資金繰りが急悪化するのは避けられない。

この記事では、納期の特例の仕組みを整理したうえで、納付額の試算方法・積み立てのコツ・資金が足りないときの具体的な対処法まで、実務目線で解説する。

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源泉所得税の納期の特例とは

制度の概要

源泉所得税の納期の特例(通称「納特(のうとく)」)とは、給与の支払いを受ける人が常時10人未満の事業者が、税務署に申請することで、源泉所得税の納付を年2回にまとめられる制度だ。

区分原則納期の特例
納付回数年12回(毎月)年2回
納付期限翌月10日下表のとおり
対象すべての源泉徴収義務者給与受給者が常時10人未満
申請不要「納期の特例の承認に関する申請書」を提出

2回の納付期限

対象期間納付期限
1月〜6月支払分7月10日
7月〜12月支払分翌年1月20日
※ 1月分のみ期限が「1月20日」とずれている点に注意。年末調整の結果を反映させるための配慮だ。

対象になる源泉所得税

納期の特例の対象は、主に次の2つに限られる。

  • 給与・賞与から天引きした源泉所得税
  • 税理士・弁護士・司法書士など、士業への報酬から天引きした源泉所得税
一方で、デザイナー・ライター・講師などへの報酬(原稿料・講演料等)から天引きした源泉所得税は、納期の特例の対象外で、原則どおり翌月10日までに納付しなければならない。混同しやすいので注意したい。

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なぜ7月と1月に資金繰りが苦しくなるのか

「半年分の一括納付」というインパクト

最大の理由は単純で、半年分の源泉所得税を一度に支払うからだ。

毎月の納付なら「毎月◯万円」という小さな出費だが、納期の特例では、その6倍が一気に出ていく。さらに、後述する賞与の源泉徴収分が上乗せされるため、想定以上の金額になりやすい。

賞与の源泉徴収と納付月が重なる

日本の多くの企業は、夏季賞与(6〜7月)・冬季賞与(12月)を支給する。賞与にも源泉所得税がかかるため、その天引き分が次の納付に上乗せされる。

納付期限対象期間重なりやすい賞与
7月10日1〜6月支払分夏季賞与(6月支給分)
1月20日7〜12月支払分冬季賞与(12月支給分)
つまり、賞与で資金が出ていった直後に、その賞与分の源泉所得税まで支払う構造になっている。7月・1月の資金繰りが特に厳しくなるのは、このダブルパンチが原因だ。

他の支払いとも重なりやすい

7月・1月は、源泉所得税以外の資金需要も集中しやすい時期だ。

  • 7月:労働保険の年度更新(概算保険料の納付)、夏季賞与、所得税の予定納税(第1期)
  • 1月:冬季賞与の直後、法定調書・償却資産申告などの事務集中
複数の支払いが折り重なることで、納付月の資金繰りはさらにタイトになる。資金繰り表で年間の資金の出入りを可視化し、7月・1月の山を事前に把握しておくことが欠かせない。

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納付額を事前に試算する

「いくら払うことになるのか」を把握できていれば、対策は打てる。納付額は、月々天引きした源泉所得税を半年分合計するだけで概算できる。

試算の例(従業員3人・月給ベース)

項目1ヶ月あたり半年分(×6)
従業員A(源泉徴収額)8,000円48,000円
従業員B(源泉徴収額)5,000円30,000円
従業員C(源泉徴収額)3,000円18,000円
賞与分の源泉徴収(夏季)60,000円
合計(7月10日納付)156,000円
このケースでは、毎月の感覚では「1.6万円ほど」だが、7月にはおよそ15.6万円を一括で支払うことになる。賞与分が加わることで、月割りの単純な6倍より大きくなる点に注意したい。

「毎月積み立てる」のが最も確実

最も確実な対策は、毎月の給与計算のたびに、天引きした源泉所得税を別口座に移しておくことだ。源泉所得税は本来「従業員から預かったお金」であり、事業の運転資金として使ってはいけない性質のものだ。

やり方ポイント
納税用の別口座を作る給与支払時に源泉徴収額を即移す
賞与時はその場で取り分ける賞与の源泉分は特に忘れやすい
半年で目標額に到達7月・1月の納付がそのまま完結
預り金を分別管理しておけば、納付月に「資金が足りない」という事態そのものが起きなくなる。詳しくは給与の資金繰り管理も参考にしてほしい。

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納付資金が足りないときの対処法

積み立てが追いつかず、納付期限が迫っても資金が足りない――。そんなときに取るべき手順を、優先度順に整理する。

① まず税務署に相談する(換価の猶予・分割納付)

資金繰りが厳しく一括納付が難しい場合、税務署に相談することで「換価の猶予」が認められ、最長1年(事情により延長可)の分割納付が可能になることがある。期限内に申請すれば、延滞税の一部も軽減される。

最も避けるべきは「何も連絡せずに滞納する」ことだ。源泉所得税は預り金であるため、税務署の対応は他の税目より厳しい。督促を放置すれば、差押えに発展するリスクもある。

② 売掛金があればファクタリングで現金化する

「税務署の分割でも間に合わない」「納期までに確実に現金を用意したい」という場合、売掛金を保有しているなら、ファクタリングで早期に現金化する選択肢がある。

ファクタリングは、入金前の売掛金を専門会社に売却し、最短即日で資金化する手段だ。借入ではないため、次のような特徴がある。

項目ファクタリング銀行融資
資金化スピード最短即日〜数日数週間〜1ヶ月
信用情報への影響なし(負債が増えない)あり(借入として記録)
審査の対象主に売掛先の信用力自社の決算・信用力
担保・保証人原則不要求められることが多い
源泉所得税の納付期限という動かせない期日に対して、入金待ちの売掛金がある場合、ファクタリングは有効なつなぎ手段になる。延滞税・不納付加算税の負担と、ファクタリング手数料を天秤にかけ、トータルで負担が軽い方を選ぶとよい。

③ 恒常的に足りないなら「構造」を見直す

毎回の納付で資金が足りないなら、それは一時的な問題ではなく、事業全体の資金繰り構造の問題だ。

  • 売上に対して人件費・固定費が重すぎないか
  • 売掛金の入金サイトが長すぎないか(入金サイトの見直し
  • そもそも預り金を運転資金に流用していないか
ファクタリングはあくまで「つなぎ」の手段だ。毎回頼る状態が続くなら、価格改定・固定費見直し・入金サイト短縮など、根本的な改善を並行して進めてほしい。

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納期の特例を「使うべきか」の判断

納期の特例は便利な制度だが、すべての事業者に向いているわけではない。次の表を判断の目安にしてほしい。

こんな事業者納期の特例の向き・不向き
預り金を分別管理できる◎ 向いている(事務負担が減る)
毎月コツコツ払う方が安心△ 原則納付のままでもよい
資金繰りがギリギリ⚠ 半年分一括の負担に注意が必要
賞与の比率が高い⚠ 納付月の上乗せが大きくなりやすい
事務負担の軽減というメリットは確かに大きい。しかし、それは「納付資金をきちんと積み立てられること」が前提だ。資金管理に不安がある段階では、あえて原則どおり毎月納付を続け、資金繰りが安定してから特例に切り替えるのも、堅実な選択といえる。

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まとめ:納期の特例は「積み立て」とセットで使う

源泉所得税の納期の特例は、毎月の事務負担を減らせる便利な制度だ。しかし、その裏側には「半年分を一括で払う」という資金繰り上のリスクが隠れている。

  • 納期は 7月10日(1〜6月分)と 翌1月20日(7〜12月分)の年2回
  • 賞与の源泉徴収分が上乗せされ、納付月の負担は想定より大きくなりやすい
  • 最も確実な対策は、毎月の天引き分を納税用口座に積み立てること
  • 資金が足りないときは、早めに税務署へ相談し、換価の猶予や分割納付を検討する
  • 売掛金があれば、ファクタリングで納付資金を確保する選択肢もある
源泉所得税は「従業員から預かったお金」であり、滞納のペナルティも重い。年2回の納付月を年間の資金繰り計画に組み込み、計画的に備えておくことが、安定経営への第一歩だ。

もし納付期限までに資金の確保が難しい場合は、手元の売掛金を活用したファクタリングが、延滞を回避するための現実的な手段になる。まずは複数社から見積もりを取り、手数料と入金スピードを比較したうえで判断してほしい。

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この状況でファクタリングを使うべきケース/使わない方がいいケース

ファクタリングは「売掛金を期日前に現金化する」手段です。資金繰りの 課題すべてに最適なわけではないため、向くケース・向かないケースを 整理しておきましょう。

使うべきケース

  • 売掛金はあるが入金待ちで、一時的に資金が不足している
  • 銀行融資が間に合わない/審査に時間をかけられない
  • 担保・保証人を用意できない、決算内容に不安がある
  • 短期・単発の資金需要で、回収後に解消する見込みがある

使わない方がいいケース

  • 慢性的な赤字・恒常的な資金不足(手数料負担で資金繰りが さらに悪化し、多重債務に陥るおそれ)
  • 低金利の融資・公的支援が間に合う、または併用すべき状況
  • そもそも売掛金がない、将来債権頼みでの利用
  • 手数料の水準やレンジを開示しない事業者しか選択肢がない

※ 金融庁も、高額な手数料のファクタリングは資金繰りの悪化・多重債務に つながるおそれがあると注意喚起しています。手数料は売掛先の信用力・ 金額・期日・契約形態等で変動します。利用前に複数社の条件を比較し、 本当に必要かを見極めてください。

次のステップ

ファクタリングは会社ごとに手数料・入金スピード・対応条件が大きく異なります。 記事の内容を踏まえて、実際に会社を比較し、自分の状況に合う1社を見つけましょう。

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執筆

ファクット編集部(監修: ろい

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