
債権譲渡とは?民法の仕組み・対抗要件・譲渡制限特約をわかりやすく解説
公開 2026-10-27ファクット編集部
債権譲渡とは、お金を請求できる権利(債権)を、その内容を変えずに第三者へ移すことです。民法466条〜469条にもとづく債権譲渡の仕組み、通知・承諾と確定日付による対抗要件、2020年の民法改正で変わった譲渡制限特約の扱い、債務者の抗弁と相殺、債権譲渡登記やファクタリングとの違い、注意点までまとめました。
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監修ろいFP・宅地建物取引士・行政書士/ファクタリング比較ラボ主宰
ファクタリングを30社以上利用し、著書『ファクタリングのトリセツ』も出版した実務家が内容を確認しています。
ストックオプション・新株予約権の公正価値評価や株価・企業価値算定を専門とするアドバイザリー会社。金融工学・信用リスク評価の知見をもとに、本記事の債権の売却と信用リスクの移転に関する記述を確認しています。
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「債権譲渡」は、ファクタリングの契約書や、取引先からの通知で目にすることが多い言葉です。この記事では、民法の条文にもとづいて、債権譲渡の意味と仕組み、対抗要件、譲渡制限特約の扱い、注意点を順番に整理します。
債権譲渡とは(先に結論)
- 債権譲渡とは、お金を請求できる権利(債権)を、中身を変えずに第三者へ移すこと です。
- 民法466条1項により、債権は 原則として自由に譲渡できます。
- 譲渡を債務者に主張するには 通知または承諾、ほかの第三者に主張するには 確定日付のある証書(法人の金銭債権なら 債権譲渡登記 も可)が必要です。
- 2020年の民法改正で、譲渡制限特約があっても譲渡自体は有効 になりました。
- ファクタリングは、法的には 債権の売買(債権譲渡)契約 です。
この記事は債権譲渡の一般的な仕組みを説明するものです。個別の契約の有効性や紛争の見通しは、契約書の内容によって判断が変わるため、弁護士などの専門家に確認してください。
債権譲渡とは?意味と3人の登場人物
債権とは、特定の相手に対して、お金の支払いなど一定の行為を求めることができる権利です。取引で生じた売掛金も債権のひとつです。債権譲渡は、この権利を第三者に移す契約です。
債権譲渡に登場する譲渡人・譲受人・債務者
債権譲渡には、次の3者が登場します。
| 立場 | 意味 | 売掛金をファクタリングする場合の例 |
|---|---|---|
| 譲渡人 | 債権を譲り渡す人(元の債権者) | 売掛金を持つ事業者(ファクタリング利用者) |
| 譲受人 | 債権を譲り受ける人(新しい債権者) | ファクタリング会社 |
| 債務者 | 債権の支払い義務を負う人 | 売掛先(取引先) |
たとえばA社がB社に商品を納め、100万円の売掛金を持っているとします。A社がこの売掛金をC社に譲渡すると、B社に100万円を請求できるのはC社になります。B社が払う金額や期日は、原則として変わりません。
債権は原則として自由に譲渡できる
民法466条1項は「債権は、譲り渡すことができる」と定めています。ただし、債権の性質上ほかの人に移すことができないもの(特定の人にだけ意味がある権利など)は例外です。
譲渡は、譲渡人と譲受人の契約で成立します。債務者の同意は、譲渡の成立には必要ありません。ただし、後で説明するとおり、債務者に「新しい債権者」として主張するための手続き(対抗要件)は別に必要です。
まだ発生していない将来の債権も譲渡できる
民法466条の6は、債権の譲渡は、譲渡の時点で債権が現に発生していなくてもよいと定めています。たとえば、継続的な取引で来月以降に発生する売掛金をまとめて譲渡することもできます。将来の債権を譲渡した場合、譲受人は債権が発生したときに当然にその債権を取得します。
債権譲渡の対抗要件|通知・承諾と確定日付
債権譲渡が当事者間で成立しても、それだけでは債務者やほかの第三者に「自分が債権者だ」と主張できません。主張するために必要な手続きを 対抗要件 といいます。
債務者に債権譲渡を主張するための通知・承諾
民法467条1項は、債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をするか、債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗できないと定めています。
ここで大切なのは、通知をするのは 譲渡人(元の債権者) だという点です。譲受人が「債権を譲り受けました」と一方的に通知しても、民法上の通知にはなりません。債務者から見れば、知らない相手から突然請求されても、本当に譲渡があったのか判断できないためです。
第三者に債権譲渡を主張するための確定日付
民法467条2項は、通知や承諾は 確定日付のある証書 でしなければ、債務者以外の第三者に対抗できないと定めています。ここでいう第三者とは、同じ債権を二重に譲り受けた人、債権を差し押さえた人、破産管財人などです。
確定日付のある証書の代表例は、内容証明郵便による通知です。同じ債権が二重に譲渡された場合などに、どちらが優先するかを、確定日付のある通知や承諾の有無と先後で判断できるようにするための仕組みです。
法人の金銭債権は債権譲渡登記でも対抗要件を備えられる
法人が金銭債権を譲渡する場合は、民法の特例として 債権譲渡登記 を使うこともできます。「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」第4条1項は、債権譲渡登記がされたときは、債務者以外の第三者については、民法467条の確定日付のある証書による通知があったものとみなすと定めています。
ただし、登記だけでは債務者には対抗できません。同条2項により、債務者に主張するには、登記事項証明書を交付して通知するか、債務者の承諾を得る必要があります。法務省も、登記は債権の存在や譲渡の有効性を証明するものではないと説明しています。登記の費用や、ファクタリングで登記が求められる条件は債権譲渡登記とは?ファクタリングで登記される条件と取引先に知られるリスクで詳しく解説しています。
| 主張する相手 | 民法の方法 | 法人の金銭債権で使える特例 |
|---|---|---|
| 債務者 | 譲渡人からの通知、または債務者の承諾 | 登記事項証明書を交付した通知、または債務者の承諾 |
| 債務者以外の第三者 | 確定日付のある証書による通知・承諾 | 債権譲渡登記 |
債権譲渡と譲渡制限特約|2020年民法改正のポイント
取引の基本契約書には、「この契約から生じる債権を第三者に譲渡してはならない」といった条項(譲渡制限特約、譲渡禁止特約)が入っていることがあります。この特約の扱いは、2020年4月1日に施行された改正民法で大きく変わりました。
譲渡制限特約があっても債権譲渡は有効
改正後の民法466条2項は、当事者が債権の譲渡を禁止・制限する意思表示(譲渡制限の意思表示)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない と定めています。
改正前は、譲渡禁止特約に反する譲渡は、特約を知っていた譲受人との関係では効力が認められないと考えられていました。改正後は、特約があっても譲渡そのものは有効です。
譲渡制限特約を知っていた譲受人への支払いは拒める
一方で、債務者の立場も守られています。民法466条3項は、譲渡制限の意思表示がされたことを 知っていた、または重大な過失によって知らなかった 譲受人に対しては、債務者は支払いを拒むことができ、譲渡人への弁済などで債務が消えたことを主張できると定めています。
つまり債務者は、特約を知っていた譲受人から請求されても、これまでどおり元の取引先(譲渡人)に支払えば足ります。ただし同条4項により、債務者が支払いをしない場合に、譲受人が相当の期間を定めて譲渡人への支払いを催告し、その期間内に支払いがないときは、債務者は譲受人への支払いを拒めなくなります。
譲渡制限特約が付いた金銭債権は供託もできる
民法466条の2は、譲渡制限の意思表示がされた金銭債権が譲渡されたときは、債務者は全額を供託所に供託できると定めています。誰に払えばよいか迷う債務者のための仕組みで、供託された金銭の還付を請求できるのは譲受人に限られます。
なお、銀行の預金や貯金の債権については、民法466条の5により、譲渡制限の意思表示を、知っていた(または重大な過失で知らなかった)譲受人に対抗できるとされており、売掛金とは扱いが異なります。
譲渡制限特約がある売掛金を譲渡するときの注意点
譲渡が法律上有効でも、取引先との契約に違反することに変わりはありません。取引先との関係が悪くなったり、契約上の責任を問われたりするおそれは残ります。売掛金を譲渡する前に、取引先との基本契約書に譲渡制限の条項がないかを確認し、ファクタリング会社にもその有無を伝えてください。

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債権譲渡と債務者の抗弁・相殺|民法468条・469条
債権譲渡で請求する人が変わっても、債務者が不利になることはありません。民法は、債務者が元の債権者に主張できた事情を、譲受人にも主張できると定めています。
債務者は対抗要件具備時までの事由を譲受人に主張できる
民法468条1項は、債務者は、対抗要件具備時(通知や承諾がされた時)までに譲渡人に対して生じた事由 をもって、譲受人に対抗できると定めています。
たとえば、納品された商品に不具合があって代金の一部を払わなくてよいと主張できる場合や、すでに一部を支払っている場合、債務者はそのことを譲受人にも主張できます。譲受人は、元の債権者が持っていた以上の権利を手に入れることはできません。
債権譲渡と相殺|債務者は相殺を譲受人に主張できる場合がある
相殺とは、互いに同じ種類の債務を負っている二者が、対当額で差し引きして債務を消すことです(民法505条)。
民法469条1項は、債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権で相殺することを、譲受人に対抗できると定めています。同条2項では、対抗要件具備時より後に取得した債権であっても、それより前の原因にもとづいて生じた債権などであれば、同じように相殺を主張できるとしています。
売掛金の譲受人から見ると、債務者が譲渡人に対して反対の債権(買掛金など)を持っている場合、その分を相殺されて回収額が減る可能性がある ということです。売掛先と仕入れの取引もある場合は、ファクタリングの審査で確認されることがあります。
債権譲渡と似た用語の違い|債権譲渡登記・ファクタリング・相殺
債権譲渡のまわりには、似た言葉がいくつもあります。違いを一覧で整理します。
| 用語 | 意味 | 債権譲渡との関係 |
|---|---|---|
| 債権譲渡登記 | 法人の金銭債権の譲渡を登記する制度 | 債権譲渡の対抗要件を備える方法のひとつ |
| ファクタリング | 売掛債権を期日前に買い取るサービス | 法的には債権の売買(債権譲渡)契約 |
| 相殺 | 互いの同種の債務を対当額で消すこと | 債務者が譲受人に主張できる場合がある |
| 債権譲渡担保 | 借入の担保として債権を譲渡すること | 目的が担保。返済すれば債権は戻る |
| 債務引受 | 債務(支払い義務)を第三者が引き受けること | 移るのが権利ではなく義務。債権譲渡とは逆向き |
債権譲渡と債権譲渡登記の違い
債権譲渡は「権利を移す契約」そのもので、債権譲渡登記は「移したことを第三者に主張するための手続き」です。登記をしなくても債権譲渡は成立しますが、二重譲渡や差押えがあったときに優先を主張するには、確定日付のある通知・承諾か登記が必要になります。
債権譲渡とファクタリングの違い
債権譲渡は、売買・担保・事業譲渡などに使われる法律上の仕組みです。ファクタリングは、その仕組みを使って、事業者の売掛金を買い取り、期日前に資金を渡すサービスです。債権譲渡のうち「売掛金の売買」を事業として行うものがファクタリングだと考えると、わかりやすくなります。
債権譲渡と債権譲渡担保の違い
債権譲渡担保は、借入の担保として債権を譲渡する方法です。形式は譲渡でも、目的は借入の返済を確保することにあり、返済が終われば債権は元の持ち主に戻ります。売掛金の売買であるファクタリングとは、経済的な性質が異なります。
債権譲渡の注意点とリスク
債権譲渡は便利な仕組みですが、譲り受ける側・譲り渡す側の双方に注意点があります。
同じ債権を二重に譲渡してはいけない
同じ売掛金を複数の相手に譲渡する(二重譲渡)と、どちらが優先するかは、確定日付のある通知・承諾や登記の先後で決まります。優先されなかった譲受人は債務者に請求できず、譲渡人はその譲受人から責任を問われることになります。ファクタリングで二重譲渡が問題になる理由は、ファクタリングは怪しい?合法である根拠と危険な業者の見分け方でも解説しています。
存在しない債権・すでに支払われた債権の譲渡
譲渡の対象となる債権が実在しない場合や、すでに支払われて消えている場合、譲受人は請求できません。法務省は、債権譲渡登記がされていても、それによって債権の存在や譲渡の真正が公的に証明されるわけではないと説明しています。譲受人は、請求書や契約書、入金履歴などで債権の実在を確認する必要があります。
債権譲渡の通知を受けた債務者が気をつけること
取引先から債権譲渡の通知を受けた場合、債務者はその後、譲受人を債権者として扱えばよいことになります。法務省は、支払いの前に同じ債権について競合する通知を2つ以上受けたときは、登記の日時や通知の到達日時の先後で優先する債権者を判断すると説明しています。誰に払うべきか判断できないときは、支払う前に専門家に相談してください。
消滅時効は債権譲渡で延びない
債権が譲渡されても、債権の内容は変わらないため、消滅時効の期間もそのまま引き継がれます。売掛金の時効の考え方は売掛金の時効は何年?消滅時効の起算点と対策で解説しています。
ファクタリングと債権譲渡の関係
ファクタリングは、債権譲渡を資金調達に使う代表的な方法です。金融庁は、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)」とし、法的には債権の売買(債権譲渡)契約 であると説明しています。
2社間・3社間ファクタリングと対抗要件
ファクタリングの2つの方式は、債権譲渡の対抗要件をどう扱うかの違いとして整理できます。
| 方式 | 売掛先への通知・承諾 | 対抗要件の主な扱い |
|---|---|---|
| 2社間ファクタリング | 原則として行わない | 債権譲渡登記を求められることがある |
| 3社間ファクタリング | 売掛先の承諾を得る | 売掛先の承諾で対抗要件を備える |
2社間では、売掛先に知らせずに契約し、売掛先からの入金を利用者がいったん受け取ってファクタリング会社に送金します。3社間では、売掛先がファクタリング会社に直接支払います。それぞれの特徴は、2社間ファクタリングに対応する会社の比較や3社間ファクタリングに対応する会社の比較でも確認できます。
債権譲渡の形でも貸付とみなされるケースがある
契約書に「債権譲渡契約」と書かれていても、中身が実質的に貸付と同じであれば、貸金業に該当するおそれがあります。金融庁は、売掛先が払えなかったときに利用者が債権を買い戻すこととされている場合や、利用者が自分の資金でファクタリング会社に支払わなければならない場合などを例に挙げ、形式だけでなく経済的な実態で判断されると注意を促しています。
売掛先が払えないときに利用者が責任を負う「償還請求権」の有無は、契約前に必ず確認してください。見分け方はファクタリングの償還請求権とノンリコースの違いで解説しています。ファクタリングの仕組み全体はファクタリングとは?仕組み・種類・手数料の入門ガイドにまとめています。
債権譲渡の仕組みを理解してから会社を選ぶ
ファクタリングを使う場合は、契約書の名目が債権譲渡(売買)契約になっているか、償還請求権がないか、債権譲渡登記の有無と費用負担はどうか、譲渡制限特約の有無をどう扱うかを確認します。これらの条件を比べたうえで会社を選びたいときは、ファクタリング会社おすすめ10選が参考になります。売掛金そのものの意味や会計処理は、売掛金とは?意味・仕訳・未収金との違いで解説しています。
- e-Gov法令検索「民法」(第466条〜第469条、第505条)
- e-Gov法令検索「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(第4条)
- 法務省「債権譲渡登記制度とは?」
- 法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
監修:ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社(ファイナンス領域の監修/信用リスクモデル「Crediflow」提供)
この記事の根拠と更新について:この記事は、上記の法令と公的機関の公表情報にもとづき、債権譲渡の一般的な仕組みを説明したものです。個別の契約の有効性や紛争の見通しは、契約書の内容や事実関係によって判断が異なるため、弁護士などの専門家にご相談ください。この記事は情報提供を目的としたもので、特定の業者の利用をすすめるものではありません。最終更新:2026-10-27。
債権譲渡のよくある質問

Q債権譲渡とは簡単にいうと何ですか?
Q債権譲渡に債務者の同意は必要ですか?
Q譲渡制限特約が付いた売掛金は譲渡できませんか?
Q債権譲渡とファクタリングは同じですか?
Q債権譲渡登記をすれば債務者に知られずに済みますか?
【まとめ】債権譲渡は「契約」と「対抗要件」を分けて考える
- 債権譲渡とは、お金を請求できる権利を、中身を変えずに第三者へ移すこと です。民法466条1項により、原則として自由に譲渡できます。
- 譲渡は譲渡人と譲受人の契約で成立し、債務者の同意は不要です。ただし債務者に主張するには 通知または承諾、第三者に主張するには 確定日付のある証書 または 債権譲渡登記 が必要です。
- 2020年の民法改正で、譲渡制限特約があっても譲渡自体は有効 になりました。ただし特約を知っていた譲受人には、債務者は支払いを拒めます。
- 債務者は、対抗要件具備時までに生じた事情や一定の相殺を、譲受人にも主張できます。
- ファクタリングは法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。償還請求権の有無など、実態が貸付になっていないかを契約前に確認しましょう。


