
取適法とは?下請法からの変更点・対象・手形禁止をわかりやすく解説【2026年施行】
公開 2026-10-27ファクット編集部
取適法(中小受託取引適正化法)とは、2026年1月1日に下請法が改正・改称された法律です。正式名称と施行日、資本金基準に加わった従業員基準、特定運送委託の追加、手形払いの禁止、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、振込手数料の扱い、委託事業者の4つの義務と11の禁止行為、下請法との違い、受注側の資金繰りへの影響までまとめました。
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「取適法(とりてきほう)」は、2026年1月1日から施行された、発注側と受注側の取引ルールを定める法律です。これまでの「下請法」が改正され、名前も中身も変わりました。この記事では、公正取引委員会と政府広報の一次情報をもとに、取適法の意味、下請法からの変更点、対象となる取引、受注側の中小事業者の資金繰りへの影響を順番に整理します。
取適法とは(先に結論)
- 取適法とは、下請法を改正して2026年1月1日に施行された「中小受託取引適正化法」 の通称です。
- 発注側を 委託事業者、受注側を 中小受託事業者 と呼び、委託事業者に 4つの義務と11の禁止行為 を課しています。
- 対象の判定に 従業員数の基準 が加わり、特定運送委託 も対象取引になりました。
- 支払いでは 手形払いが禁止 され、受領日から 60日以内 の支払期日に、代金の満額を受け取れることが求められます。
- 価格協議に応じない 一方的な代金決定 も、新たに禁止されました。
この記事は取適法の一般的な内容を説明するものです。個別の取引が対象になるか、違反にあたるかは、契約や取引の実態によって判断が変わります。具体的な判断は、公正取引委員会の相談窓口や弁護士などの専門家に確認してください。
取適法とは?正式名称・施行日と目的
取適法は、発注する側と受注する側の力の差によって、受注側が不当な負担を負わないようにするための法律です。まず、名前と施行日、目的を押さえます。
取適法の正式名称と読み方
取適法の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。長いため、法令上の略称は「中小受託取引適正化法」、通称は「取適法」とされています。読み方は「とりてきほう」です。
もともとは「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)という名前の法律でした。法律そのものが新しく作られたのではなく、下請法が改正され、名前が変わったものです。
取適法はいつから施行されたか
| 時点 | できごと |
|---|---|
| 2025年5月23日 | 改正法(下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律)が公布される |
| 2026年1月1日 | 「中小受託取引適正化法(取適法)」として施行される |
取適法の目的
取適法の第1条は、受託取引を公正にし、中小受託事業者の利益を守ることを目的に掲げています。政府広報オンラインは、改正の背景として、労務費や原材料費が上がるなかで、中小企業が賃上げの原資を確保し、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させることを挙げています。
取適法と下請法の違い|主な変更点
取適法で何が変わったのかを、下請法と並べて整理します。公正取引委員会と政府広報オンラインが示している改正点をまとめたものです。
| 項目 | 改正前(下請法) | 改正後(取適法) |
|---|---|---|
| 法律の呼び方 | 下請代金支払遅延等防止法(下請法) | 中小受託取引適正化法(取適法) |
| 発注側の呼び方 | 親事業者 | 委託事業者 |
| 受注側の呼び方 | 下請事業者 | 中小受託事業者 |
| 代金の呼び方 | 下請代金 | 製造委託等代金 |
| 対象の判定基準 | 資本金の基準のみ | 資本金の基準 または 従業員数の基準 |
| 対象取引 | 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託 | 左の4つに 特定運送委託 を追加 |
| 手形による支払い | サイトが60日を超える手形を禁止 | 手形払いそのものを禁止 |
| 電子記録債権・ファクタリング方式 | — | 支払期日までに満額の現金を得にくいものを禁止 |
| 価格の決め方 | 買いたたき(著しく低い代金)を禁止 | 加えて、協議に応じない一方的な代金決定 を禁止 |
| 発注内容の明示 | 書面。メールなどは受注側の承諾が必要 | 受注側の承諾がなくても、メールなどで明示できる |
| 執行の体制 | 公正取引委員会・中小企業庁が指導・助言 | 事業を所管する省庁の大臣にも指導・助言の権限 |
表の「—」は、公正取引委員会の比較資料で改正前の扱いが示されていない項目です。
用語の見直し:「下請」から「中小受託」へ
政府広報オンラインは、「下請」という言葉に発注側と受注側の上下関係を連想させる面があったことを、用語を見直した理由に挙げています。法律の名前だけでなく、「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」、「下請代金」は「製造委託等代金」に変わりました。
手形払いの禁止と電子記録債権・ファクタリング方式
取適法の第5条第1項第2号は、代金を支払期日までに支払わないこと(支払遅延)の中に、手形を交付すること と、支払期日までに代金の額に相当する金銭と引き換えることが難しい支払手段を使うこと を含めました。
公正取引委員会は、手形払いだと現金化までの期間の資金繰りを受注側が負担することになり、電子記録債権やファクタリングなどによる支払いでも同じ負担が生じることを課題として挙げています。そのため、電子記録債権や一括決済方式(ファクタリング方式)は、支払期日までに 手数料などを含めた満額の現金を得ることが難しいもの が禁止されました。
振込手数料の差し引きも問題に
公正取引委員会は、改正点のひとつとして、振込手数料を受注側に負担させることの禁止を挙げています。同委員会のQ&Aでは、受注側が合意していても、代金を振り込む際の手数料を受注側に負担させて代金から差し引くことは問題になるとしています。電子記録債権や一括決済方式で生じる受取手数料などを受注側に負担させることも、合意の有無にかかわらず支払遅延として違反になるとされています。

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取適法の対象になる取引と事業者|資本金・従業員基準
取適法が適用されるかどうかは、「取引の内容」と「事業者の規模」の2つで決まります。
対象となる5つの取引
| 取引の種類 | 内容の例 |
|---|---|
| 製造委託 | 販売する物品や部品、金型などの製造を他の事業者に委託する |
| 修理委託 | 請け負った物品の修理を他の事業者に委託する |
| 情報成果物作成委託 | プログラム、映像、デザインなどの作成を委託する |
| 役務提供委託 | 請け負ったサービスの提供を他の事業者に委託する |
| 特定運送委託(新設) | 販売した物品などを取引の相手方に届ける運送を、運送事業者に委託する |
特定運送委託は、発荷主から元請の運送事業者への運送委託を対象にしたものです。公正取引委員会は、立場の弱い物流事業者が荷役や荷待ちを無償で行わされている問題を、追加の理由に挙げています。
なお、建設業者が請け負った建設工事を他の建設業者に請け負わせる取引は、取適法の役務提供委託から除かれています。建設工事の下請取引には、建設業法のルールが適用されます。
資本金基準と従業員基準
取適法の第2条第8項・第9項は、委託事業者と中小受託事業者の範囲を次のように定めています。資本金の基準か従業員数の基準の どちらかを満たせば 対象になります。
| 取引の種類 | 委託事業者(発注側) | 中小受託事業者(受注側) |
|---|---|---|
| 製造委託・修理委託・特定運送委託、政令で定める情報成果物作成委託・役務提供委託 | 資本金3億円超 | 資本金3億円以下(個人を含む) |
| 同上 | 資本金1,000万円超3億円以下 | 資本金1,000万円以下(個人を含む) |
| 同上 | 従業員300人超 | 従業員300人以下(個人を含む) |
| 上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託 | 資本金5,000万円超 | 資本金5,000万円以下(個人を含む) |
| 同上 | 資本金1,000万円超5,000万円以下 | 資本金1,000万円以下(個人を含む) |
| 同上 | 従業員100人超 | 従業員100人以下(個人を含む) |
従業員数の基準が加わった理由について、公正取引委員会は、資本金は意図的に操作でき、事業規模が大きいのに減資によって対象外になる例や、受注側に増資を求めて対象外にする例があったことを挙げています。
取適法で委託事業者に課される4つの義務と11の禁止行為
取適法は、発注側である委託事業者に、守るべき義務と、してはいけない行為を定めています。
委託事業者の4つの義務
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 発注内容等の明示 | 給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを、書面またはメールなどで明示する |
| 取引記録の作成・保存 | 取引の記録を作成し、2年間保存する |
| 支払期日の設定 | 物品などを受け取った日から 60日以内で、できる限り短い期間 に支払期日を定める |
| 遅延利息の支払い | 支払期日までに払わなかった場合、受領日から60日を経過した日から支払日まで、年率14.6%の遅延利息を払う |
支払期日について、取適法の第3条は、検査をするかどうかにかかわらず、受領日から起算して60日以内に定めなければならないとしています。支払期日を定めなかった場合は受領日が、60日を超えて定めた場合は受領日から60日を経過した日の前日が、支払期日とみなされます。
委託事業者の11の禁止行為
政府広報オンラインが整理している11の禁止行為は次のとおりです。
- 受領拒否
- 製造委託等代金の支払遅延(手形の交付などを含む)
- 製造委託等代金の減額(振込手数料の差し引きを含む)
- 返品
- 買いたたき
- 購入・利用の強制
- 報復措置
- 有償支給原材料等の対価の早期決済
- 不当な経済上の利益の提供要請
- 不当な給付内容の変更・やり直し
- 協議に応じない一方的な代金決定(新設)
11番目の「協議に応じない一方的な代金決定」は、受注側からコストの上昇などを理由に価格の協議を求められたのに、協議に応じなかったり、必要な説明をしなかったりして、一方的に代金を決めることを指します。
取適法の注意点|違反したとき・相談先・フリーランス法との関係
取適法に違反した場合の勧告と罰金
公正取引委員会は、禁止行為(第5条)に違反していると認めたときは、代金の支払いや減額分の返還などの必要な措置をとるよう 勧告 します(第10条)。また、発注内容を明示しなかった場合や、取引記録を作成・保存しなかった場合などは、50万円以下の罰金 の対象になります(第14条)。
取適法違反かもと思ったときの相談先
受注側で「価格協議に応じてもらえない」「代金が支払われない」といった問題があるときは、公正取引委員会の相談窓口に相談できます。政府広報オンラインによると、相談した内容が委託事業者に知られることはなく、窓口に知らせたことを理由に取引を減らすなどの扱いをすることは、報復措置として禁止されています。改正により、事業を所管する省庁への通報も、報復措置の禁止の対象に加わりました。
フリーランス法との関係
受注側がフリーランス(特定受託事業者)にもあたり、委託事業者の行為が取適法とフリーランス・事業者間取引適正化等法の両方に違反する場合は、原則としてフリーランス・事業者間取引適正化等法が優先して適用されます。
取適法で受注側の資金繰りはどう変わるか|ファクタリングとの関係
取適法の改正点のうち、手形払いの禁止や満額での支払いの確保は、受注側の中小事業者の資金繰りに直接かかわります。
手形の現金化を待つ期間と割引料の負担が減る
これまでは、手形で代金を受け取ると、満期日まで待つか、手数料(割引料)を払って期日前に現金化する必要がありました。取適法の対象取引では、手形払いが禁止され、電子記録債権などを使う場合も、支払期日に満額の現金を受け取れる状態が求められます。受注側にとっては、入金の時期が読みやすくなり、手数料で目減りする分も減る ことになります。
紙の手形・小切手そのものの利用縮小の流れは、約束手形・小切手の廃止はいつ?中小企業の対応で、電子記録債権の仕組みは電子記録債権とは?でんさいとの違いと資金化の方法で解説しています。
それでも入金までの期間は残る
ただし、取適法は「すぐに払うこと」を求める法律ではありません。支払期日は 受領日から60日以内 であればよいため、納品から入金まで最大で約2か月かかる取引は残ります。また、資本金と従業員数のどちらの基準にもあてはまらない取引や、建設工事の再請負のように取適法の対象外となる取引では、支払条件は契約によって決まります。
その間にも、仕入れの代金や給与、税金の支払い日はやってきます。売上が立っても、入金されるまでの間は手元の現金が増えないため、資金繰りの管理は引き続き必要です。支払いサイトの考え方は支払いサイトとは?日数の数え方と延長を要請されたときの交渉で、取引先に入金を早めてもらう交渉の進め方は支払いサイト短縮交渉の実践ガイドで整理しています。
受注側が自分で売掛金を売るファクタリングとの違い
取適法で問題になる「ファクタリング」は、委託事業者が代金の支払手段として使う一括決済方式 のことです。これに対して、受注側の事業者が自社の判断で売掛金をファクタリング会社に売り、入金日より前に現金を受け取る方法は、取適法が委託事業者に課している規制とは別の話です。
入金までの期間に支払いが重なり、資金が足りない場合は、売掛金を早めに現金化する方法のひとつとしてファクタリングがあります。金融庁は、ファクタリングを売掛債権を期日前に一定の手数料で買い取るサービスで、法的には債権の売買(債権譲渡)契約であると説明しています。手数料がかかるため、入金を待っても間に合う場合は使う必要はありません。売掛金の基本は売掛金とは?意味・仕訳・未収金との違いで、融資などほかの方法との比べ方は資金調達方法7選の比較で確認できます。
- e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(第1条〜第7条、第10条、第14条)
- 政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」
- 公正取引委員会「取適法・振興法(法改正について)」
- 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(Q81・Q99・Q140ほか)
- 公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
- 中小企業庁「中小受託取引適正化法」
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
監修:ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社(ファイナンス領域の監修/信用リスクモデル「Crediflow」提供)
この記事の根拠と更新について:この記事は、上記の法令と公的機関の公表情報にもとづき、取適法の一般的な内容を説明したものです。監修は、取適法の改正が中小事業者の資金繰りに与える影響と売掛金の資金化に関する記述に限られ、法令の解釈や個別の取引の適法性の判断は含みません。個別の取引については、公正取引委員会の相談窓口や弁護士などの専門家にご相談ください。この記事は情報提供を目的としたもので、特定の業者の利用をすすめるものではありません。最終更新:2026-10-27。
取適法のよくある質問

Q取適法とは簡単にいうと何ですか?
Q取適法の正式名称は何ですか?
Q取適法はいつから施行されましたか?
Q取適法で手形による支払いはできなくなりましたか?
Q振込手数料を代金から差し引くことは取適法違反ですか?
【まとめ】取適法は「対象かどうか」と「支払条件」をまず確認する
- 取適法とは、下請法を改正して2026年1月1日に施行された「中小受託取引適正化法」 の通称です。
- 「親事業者」は 委託事業者、「下請事業者」は 中小受託事業者 に呼び方が変わりました。
- 対象の判定に 従業員数の基準(製造委託等は300人、役務提供委託等は100人)が加わり、特定運送委託 も対象になりました。
- 手形払いの禁止、満額の現金を得にくい電子記録債権・一括決済方式の禁止、振込手数料の差し引きの禁止、協議に応じない一方的な代金決定の禁止 が加わりました。
- 支払期日は 受領日から60日以内。受注側は入金が読みやすくなる一方、入金までの期間は残るため、資金繰りの管理は引き続き必要です。


