
手形割引とは?仕組み・割引料の計算とファクタリングとの違い、手形廃止後の選択肢
公開 2026-10-27ファクット編集部
手形割引とは、受け取った約束手形を満期日より前に銀行などに譲り渡し、満期日までの利息にあたる割引料を差し引いた金額を受け取る方法です。申し込みから取立てまでの流れ、割引料の計算方法と計算例、裏書と遡求(買戻し)、手形貸付・でんさい割引・ファクタリングとの違い、注意点、2027年3月末の手形交換廃止と最終振出期限、手形がなくなった後の資金化の選択肢までまとめました。
この記事の執筆者
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アドバイザリー監修
弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・行政書士など各種国家資格の保有者が在籍するSOASがアドバイザリーとして編集体制を監修しています。
監修ろいFP・宅地建物取引士・行政書士/ファクタリング比較ラボ主宰
ファクタリングを30社以上利用し、著書『ファクタリングのトリセツ』も出版した実務家が内容を確認しています。
ストックオプション・新株予約権の公正価値評価や株価・企業価値算定を専門とするアドバイザリー会社。金融工学・信用リスク評価の知見をもとに、本記事のうち手形・売掛金の資金化と割引料の考え方、不渡りによる買戻しなど信用リスクに関する記述を確認しています。手形法・貸金業法など法令の解釈や会計処理は監修の範囲に含みません。
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「手形の満期日まで待てない」「仕入れ代金の支払いに、手形の入金が間に合わない」。こうしたときに使われてきたのが 手形割引 です。この記事では、手形割引の意味と流れ、割引料の計算、不渡りのときの買戻し、似た方法との違い、注意点、紙の手形の廃止に向けた今後の選択肢までを順番に整理します。
手形割引とは(先に結論)
- 手形割引とは、受け取った約束手形を満期日より前に銀行などに渡し、割引料を差し引いた金額を受け取る方法 です。
- 割引料は、手形金額 × 割引率 × 満期日までの日数 ÷ 365 で考えます。
- 手形が 不渡り になると、割引を受けた側が 手形を買い戻す 必要があります。
- ファクタリングとの違いは、対象(手形か売掛金か)、買戻しの責任、審査で見られる相手 です。
- 紙の手形は、2027年3月末までに電子交換所での交換が廃止 されます。でんさいの割引や売掛金の資金化が代わりの方法になります。
この記事の金額や日数の例は、すべて説明用の仮の数字です。実際の割引率や手数料、取り扱いの条件は、取引金融機関に確認してください。
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手形割引とは?意味と手形を期日前に現金化する仕組み
手形割引は、満期日(支払期日)がまだ来ていない手形を、銀行や信用金庫などに譲り渡して、期日前に現金を受け取る方法です。受け取れるのは手形金額の全額ではなく、満期日までの利息にあたる 割引料 を差し引いた金額です。
手形そのものの仕組みは手形とは?約束手形の仕組み・種類と廃止への対応で解説しています。ここでは、手形を受け取った側が期日前に使う方法としての手形割引を見ていきます。
手形割引にかかわる人
| 立場 | 役割 |
|---|---|
| 振出人 | 手形を振り出し、満期日に代金を支払う会社 |
| 割引依頼人 | 手形を受け取り、銀行などに割引を申し込む会社 |
| 割引をする金融機関 | 手形を受け取り、割引料を差し引いた金額を支払う |
手形割引をすると、手形は金融機関に移ります。満期日には、金融機関が振出人から代金を取り立てます。
手形割引は「融資」に近い取引
手形割引は、手形を売る取引の形をとりますが、不渡りになれば割引依頼人が買い戻すため、実質的には融資に近い取引とされています。貸金業法も、「貸付け」の定義に手形の割引を含めています(第2条)。そのため、銀行など以外の事業者が業として手形割引を行うには、貸金業の登録が必要です。
手形割引の流れ|申し込みから満期日の取立てまで
手形割引の一般的な流れは次のとおりです。
| 順番 | できごと |
|---|---|
| 1 | 取引先から約束手形を受け取る |
| 2 | 取引金融機関に手形割引を申し込み、手形に裏書をして渡す |
| 3 | 金融機関が、振出人と割引依頼人の信用、手形の記載内容などを審査する |
| 4 | 割引料などを差し引いた金額が口座に入金される |
| 5 | 満期日に、金融機関が振出人から手形の代金を取り立てる |
| 6 | 不渡りになった場合は、割引依頼人が手形を買い戻す |
審査で見られること
手形割引は融資に近い取引のため、金融機関は、手形を振り出した会社が満期日に払えるかどうかと、割引を申し込む会社に買い戻す力があるかどうかの両方を見ます。初めての取引では、手形割引の枠(割引の上限額)を設けるための審査が行われることもあります。
手形の記載に不備がないか
手形法が定める記載事項が欠けている手形は、原則として約束手形としての効力がありません。金額、満期日、振出人の署名などに不備があると、割引を断られることがあります。
手形割引の割引料|計算方法と計算例
手形割引の費用の中心は 割引料 です。割引料は、満期日までの期間に応じた利息のようなもので、次の考え方で計算します。
割引料 = 手形金額 × 割引率(年率) × 割引日数 ÷ 365
割引日数は、割り引く日から満期日までの日数です。満期日が先の手形ほど、割引料は高くなります。
計算例(仮の数字)
次の数字は、計算の考え方を示すための仮のものです。実際の割引率を示すものではありません。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 手形金額 | 100万円 |
| 割引率 | 年3%(仮) |
| 満期日までの日数 | 73日 |
| 割引料 | 100万円 × 3% × 73 ÷ 365 = 6,000円 |
| 受け取る金額 | 100万円 − 6,000円 = 99万4,000円 |
同じ手形でも、満期日までの日数が倍になれば、割引料も倍になります。
割引料以外にかかる費用と注意点
割引率は、金融機関が振出人や割引依頼人の信用力などを見て決めます。日数の数え方(割り引く日と満期日の両方を数えるかなど)や、割引料の最低額、取立てにかかる手数料などの扱いも、金融機関ごとに違います。比べるときは、実際に受け取れる金額 で比べることが大切です。

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手形割引の裏書と遡求|不渡りになったときの買戻し
手形割引で最も注意したいのが、不渡りになったときの責任 です。
裏書をした人は支払いを担保する
手形割引では、割引依頼人が手形に裏書をして金融機関に渡します。裏書をした人は、手形の支払いを担保する責任を負います(手形法第15条。約束手形には第77条で準用)。
不渡りになると遡求を受ける
手形法第43条は、満期に支払いがないときは、手形を持っている人が裏書人や振出人などに対して 遡求権 を行使できると定めています(約束手形には第77条で準用)。つまり、振出人が満期日に払えなければ、手形を持っている金融機関は、裏書をした割引依頼人に支払いを求めることができます。
金融機関との約束による買戻し
実務では、金融機関との取引の約束(特約)により、手形が不渡りになったときや、満期日前でも振出人や割引依頼人の信用が悪くなったときに、割引依頼人が手形を 買い戻す ことになっているのが一般的です。
| 場面 | 割引依頼人に起きること |
|---|---|
| 満期日に振出人が支払った | 取引は終わり。追加の負担はない |
| 満期日に不渡りになった | 手形を買い戻すため、受け取った現金を返す必要がある |
| 満期日前に振出人の信用が悪化した | 満期日を待たずに買戻しを求められることがある |
手形割引で現金を受け取っても、満期日に支払われるまでは、振出人が払えないリスクは自社に残っている と考えておく必要があります。
手形割引と似た方法の違い|手形貸付・でんさい割引・ファクタリング
手形割引と混同しやすい方法を比べます。
手形貸付との違い
手形貸付 は、借りる会社が自分で金融機関あての約束手形を振り出して、お金を借りる方法です。手形割引は「取引先から受け取った手形」を使うのに対し、手形貸付は「自社が借入のために振り出す手形」を使う点が違います。手形貸付は、短期の運転資金の借入で使われてきました。
でんさい割引との違い
でんさいの割引 は、電子記録債権(でんさい)を支払期日前に金融機関に譲り渡して資金化する方法で、手形割引の電子版にあたります。でんさいネットは、でんさいは分割して譲渡や割引ができ、手形と違って印紙税がかからないと説明しています。割引を受けるには、手形割引と同じく金融機関の審査があります。仕組みは電子記録債権とは?でんさいとの違い・資金化の方法で詳しく解説しています。
ファクタリングとの違い
ファクタリングは、手形ではなく 売掛金 をファクタリング会社に売って、入金日より前に現金を受け取る方法です。
| 項目 | 手形割引 | ファクタリング |
|---|---|---|
| 対象 | 約束手形(でんさいは別の手続き) | 売掛金 |
| 取引の性質 | 融資に近い取引(貸金業法では貸付けに含まれる) | 売掛金の売買(債権譲渡) |
| 不渡り・未払いのとき | 割引依頼人が手形を買い戻す(遡求・買戻し) | 償還請求権のない契約なら、原則として買い戻す必要はない |
| 審査で主に見られる相手 | 振出人と割引依頼人の両方 | 主に売掛先(支払う側)の信用 |
| 費用 | 日数に応じた割引料 | 売掛金に対する手数料 |
| 分割 | 手形金額を分けられない | 売掛金の一部だけを売れる場合がある |
ファクタリングには、償還請求権のない ノンリコース の契約と、償還請求権のある ウィズリコース の契約があります。違いと見分け方はファクタリングの償還請求権とはで整理しています。
手形割引のメリット・デメリットと注意点
手形割引の良い点と注意点をまとめます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 満期日を待たずに現金にできる | 割引料がかかり、満期日が先なほど高くなる |
| 費用は満期日までの日数に応じた割引料で、計算がわかりやすい | 不渡りになれば手形を買い戻す必要がある |
| 取引金融機関で手続きできる | 手形金額を分けて割り引けない |
| 振出人の信用力が高い手形は割り引きやすい | 金融機関の審査があり、割引の枠に上限がある |
振出人の状況に気を配る
割り引いた手形が不渡りになると、受け取った現金を返さなければなりません。振出人の支払いが遅れがちになった、取引条件の変更を求められたといった変化があれば、早めに資金繰りの見直しを考えます。
割引の枠は借入と同じように見られる
手形割引は融資に近い取引のため、割り引いた金額は、金融機関から見た与信の一部として扱われます。割引の枠を使い切っていると、ほかの借入の相談に影響することもあります。
手形割引はいつまで使える?紙の手形の交換廃止と最終振出期限
紙の約束手形は、政府と銀行業界の方針により、利用の廃止に向けた取り組みが進んでいます。手形割引も、紙の手形がなくなれば使えなくなります。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2026年9月30日 | 多くの金融機関が設定している手形・小切手の最終振出期限 |
| 2027年3月末 | 電子交換所での紙の手形・小切手の交換が廃止 |
全国銀行協会は、最終振出期限を設けた金融機関では、その翌日以降、原則として手形・小切手を使った当座預金からの支払いができなくなると案内しています。最終振出期限より後に振り出された手形・小切手は、受け取っても資金化できない場合があります。最終振出期限は金融機関ごとに違うため、手元の手形を割り引けるかどうかは、取引金融機関に確認してください。
廃止の経緯と、受け取る側・振り出す側の移行手順は約束手形・小切手の廃止はいつ?2026年度末に向けた中小企業の対応で、取引の内容によって手形での支払いが禁止される取適法については取適法とは?下請法からの変更点・対象・手形禁止で解説しています。
手形割引の代わりになる資金化の方法とファクタリング
紙の手形がなくなると、支払いは主に 振込 か でんさい に変わります。支払いまでの期間が短くなれば資金繰りは楽になりますが、納品から入金までの期間がなくなるわけではありません。これまで手形割引で期日前に現金にしていた会社は、代わりの方法を決めておく必要があります。
| 受け取る形 | 期日前に資金化する方法 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| でんさい | でんさいの割引・譲渡 | 手形割引に近い。金融機関の審査があり、買戻しの責任が付くのが通常 |
| 売掛金(振込で支払われる) | 売掛金を担保にした借入 | 金融機関の融資。審査と返済がある |
| 売掛金(振込で支払われる) | ファクタリング | 売掛金を売って現金にする。借入ではない。手数料がかかる |
売掛金とでんさい、手形をまとめた「売上債権」の考え方は売上債権とは?売掛金・受取手形との違いで確認できます。
金融庁は、ファクタリングを売掛債権を期日前に一定の手数料で買い取るサービスで、法的には債権の売買(債権譲渡)契約であると説明しています。手数料がかかるため、入金を待っても支払いに間に合うなら、使う必要はありません。基本はファクタリングとは?仕組み・種類・手数料・融資との違いで解説しています。
手形割引の代わりにファクタリングを使う場合、費用を抑えたいなら手数料が安いファクタリング会社の比較から探せます。同じ請求書で複数社の条件をそろえて比べたいときは、一括見積もりなら条件に合う会社だけに最大3社まとめて依頼できます。
- e-Gov法令検索「手形法」(第15条、第43条、第77条)
- e-Gov法令検索「貸金業法」(第2条)
- 全国銀行協会「紙の手形・小切手利用廃止へ」
- 公正取引委員会「約束手形の利用廃止を踏まえたサプライチェーン全体での支払の適正化について」(2026年9月2日、中小企業庁と共同)
- 株式会社全銀電子債権ネットワーク「でんさいとは」
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
監修:ストックオプションアドバイザリーサービス株式会社(ファイナンス領域の監修/信用リスクモデル「Crediflow」提供)
この記事の根拠と更新について:この記事は、上記の法令と公的機関・業界団体の公表情報にもとづき、手形割引の一般的な仕組みと注意点を説明したものです。監修は、手形・売掛金の資金化と信用リスクに関する記述に限られ、手形法・貸金業法などの法令の解釈や会計処理、個別の取引の判断は含みません。割引率・手数料・最終振出期限などの取り扱いは金融機関ごとに異なるため、取引金融機関にご確認ください。この記事は情報提供を目的としたもので、特定の業者の利用をすすめるものではありません。最終更新:2026-10-27。
手形割引のよくある質問

Q手形割引とは簡単にいうと何ですか?
Q手形割引の割引料はどう計算しますか?
Q手形割引とファクタリングの違いは何ですか?
Q手形割引はいつまで使えますか?
【まとめ】手形割引は「期日前の現金化」と「不渡りのリスク」をセットで考える
- 手形割引とは、受け取った約束手形を満期日より前に銀行などに渡し、割引料を差し引いた金額を受け取る方法 です。
- 割引料は 手形金額 × 割引率 × 割引日数 ÷ 365 で考えます。満期日が先なほど高くなります。
- 割引をしても、手形が 不渡りになれば買い戻す 必要があり、振出人が払えないリスクは自社に残ります。
- ファクタリングは 売掛金の売買 で、償還請求権のない契約なら、原則として買い戻す必要はありません。
- 紙の手形は 2027年3月末までに交換が廃止 され、多くの金融機関の最終振出期限は 2026年9月30日 です。でんさいの割引や売掛金の資金化への切り替えを早めに考えましょう。


